〜理容室・美容室(美容院)経営の法律知識〜

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理容室・美容室(美容院)の開業・経営に必要な行政手続や法律知識について、さまざまな情報を提供しています。理美容室経営者の方や将来独立開業予定の理容師・美容師の方、理美容業界関係者の方は、ぜひお読みください!
5-11.顧客名簿やカルテの第三者への提供について
《4:個人データの第三者提供に関する規制》

 個人情報取扱事業者が、顧客名簿やカルテを名簿業者などに販売する行為や、同業者間で使いまわすような行為は「個人データの第三者提供」となり、以下の規制を受けます。

【原則】 第三者への提供禁止

 「個人情報取扱事業者は、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない」。 つまり、事前に本人の同意がなければ「ダメ」ということです。同意は「あらかじめ」ですので事後承諾ではダメです。これに違反すると罰則の対象となります。

【例外1】 本人の同意がなくても、個人データを第三者に提供できる場合
  1. 法令に基づく場合 (例:令状による捜査を受けた場合など)
  2. 人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。 (例:急病の際に、本人について、その血液型や家族の連絡先等を医師や看護士に提供する場合や、私企業間において、意図的に業務妨害を行うものの情報について情報交換される場合)
  3. 公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。 (例:不登校の生徒についての情報を、児童相談所や学校等が連携して対応するために交換する場合)
  4. 国の機関若しくは地方公共団体又はその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行することに対して協力する必要がある場合であって、本人の同意を得ることにより当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき。 (例:事業者等が、警察や税務職員の求めに応じて、任意に個人情報を提出する場合)
 どこかで見たことありませんか? 実はこれは5-4で出てきた個人情報の利用目的についての例外と、全く同じです。
 したがって、警察官から犯罪捜査のために個人情報の提供を求められた場合や、裁判所からの求めに応じて個人情報を提出する場合、お客さまが店内でケガをしたり急病になって意識がないような場合に、救急隊員や病院にそのお客様の連絡先などの個人情報を提供する場合には、本人の同意がなくても良いことになります。
 しかし、通常の事業では、あまり関係のないケースですよね。

【例外2】 オプトアウト

 個人情報取扱事業者は、第三者提供におけるオプトアウトを行っている場合には、本人の同意なく、個人データを第三者に提供することができます。 「オプトアウト」というのは、聞き慣れない言葉だと思いますね。
 通常は、個人情報取扱事業者が個人データを第三者に提供する場合には、「あらかじめ」本人の同意が必要です。このように、事前に本人の同意や承諾をとるのが必要な場合を「オプト・イン(事前選択)」といいます。
 これに対して、本人から「やめろ」と言われた場合に、はじめて個人データの第三者への提供を止めればよいという場合を「オプト・アウト(事後選択)」といいます。  この「オプト・アウト」は、個人情報の第三者提供を行う前に、あらかじめ、以下の1〜4の情報を、本人に通知し又は本人が容易に知り得る状態に置いておく必要があります。
  1. 第三者への提供を利用目的とすること。
  2. 第三者に提供される個人データの項目
  3. 第三者への提供の手段又は方法
  4. 本人の求めに応じて当該本人が識別される個人データの第三者への提供を停止すること。
 この制度は、住宅地図業者やデータベース事業者(DM用の名簿等を作成し販売する業者など)が、実際問題としてそこに掲載される個人すべてに対して、「あらかじめ、本人の同意」を得るのは難しいことから、定められたルールだといわれています。
 したがって、個人情報取扱事業者にあてはまる理容室・美容室で、親子兄弟会社やグループ会社、FC本部や加盟店との間で個人データを共同利用したいような場合には、前節5-10で説明した《個人データを共同利用する場合にすべきこと》の手続をするほうが、むしろ簡単だといえそうです。
 なお、この「オプトアウト」制度は、「個人」としての自分の情報が名簿業者などの間で流通している場合に、知っておくと参考になると思います。

《5:いわゆる「のれん分け」に伴う個人情報の移転について》

【原則】お客様一人ひとりの事前の同意が必要

 いわゆる「のれん分け」のように、それまで自分のお店で働いていたスタッフが独立して別のお店を構える際に、そのスタッフが担当していたお客さんの名簿を提供するような行為は、原則として「個人データの第三者提供」となります。したがって、顧客名簿やカルテを提供する前に、該当するお客様に個別に同意を得る必要があります。
 もっとも、お客様一人ひとりに事前に同意を取るというのは、人数が多い場合には、結構大変な作業となりますね。
 そこで、この「同意」が不要な場合を考えてみます。

【例外1】営業譲渡に伴う顧客名簿の移転

 これについては、すでに前節5-10で説明しましたが、それまで自分のお店で働いていたスタッフに対して、「お店をまるごと営業譲渡」し、「それに伴って顧客名簿もそのスタッフに移転する場合」には、個人データの第三者提供には当たりません。
 したがって、このような場合には、営業譲渡を受けたスタッフは、引き続きお店の顧客名簿やカルテを利用し続けることができます。ただし、その利用目的は、営業譲渡前の個人情報の利用目的の範囲内に制限されます。
 ただ、スタッフがそれまでのお店とはまったく別に、新規にお店を立ち上げるような場合には、この方法は使えないことになります。

【例外2】個人データの共同利用事項の公表

 個人情報情報保護法では、「個人情報を共同して利用する旨」や「共同利用者の範囲」などの一定の事項を「あらかじめ、本人に通知し、又は本人が容易に知り得る状態に置いている場合」には、個人データの第三者提供には当たらないとされています。 したがって、お店のホームページなどでこの一定の事項を公表しておけば、スタッフが新たに開業するお店でも、顧客名簿やカルテを利用することができるようになります。
 なお、公表事項や公表方法の詳細については、すでに前節5-10で説明しましたので、そちらの記事を参照してください。

【例外3】オプトアウト

 これは、上記の記事で説明しました。ただ、この場合には、顧客名簿やカルテを提供する側のお店で、個人情報の利用目的として、「第三者への提供」を掲げる必要があります。
 これはつまり、「当美容室では、お客様からいただいた住所や氏名などの情報を、第三者に提供する目的で利用させていただきます。」ということを堂々と宣言することを意味します。当然、こんなことをしてしまったら、もとのお店のほうで、お客様が住所や氏名を教えてくれなくなってしまい、営業に悪影響が出てしまいそうですよね。
 したがって、現実的には、上記【例外2】の手段をとるのが妥当だといえそうです。

 なお、本節で説明したケースは、あくまで独立するスタッフを送り出すお店の側が、スタッフに顧客名簿やカルテを協力的に「プレゼント」するような場合です。
 そもそも、送り出す側のお店のほうにそのような気持ちがないのに、独立するスタッフが勝手に顧客名簿やカルテをお店から持ち出してしまうような場合には、そのスタッフは刑法上の窃盗罪や詐欺罪に問われる可能性がありますし、民法上の不法行為や不正競争防止法違反により、お店に対する損害賠償責任が生じる可能性があります。
 一方、顧客名簿やカルテを持ち出されてしまったお店側にも、個人情報の管理責任やお客様に対する民事責任が問われます。なお、この問題については、別にテーマを設けてあらためて説明させていただく予定です。