〜理容室・美容室(美容院)経営の法律知識〜

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6-10.有限会社を続けるか? 株式会社になるか?(1)
 前節6-9で説明したように、会社法の施行により、有限会社は資本金を増額したり役員の人数を増やすことなく、比較的簡単な手続で株式会社に変更することが出来る様になりました。
 しかし、株式会社になるよりも、あえて有限会社のまま経営を続ける方が、会社の運営上都合がいい場合もあります。そこで、本節では双方のメリット・デメリットを比較してみます。

《有限会社、株式会社のメリット・デメリット》

 ○有限会社のメリット・デメリット
  1. 取締役の任期がないため、それまでの株式会社のように2年ごとに役員変更の登記をする必要がない。
  2. 取締役は1名以上でよく、取締役会を設置しなくてもよい。(逆に、取締役会を設置したくても設置できない。)
  3. 監査役を設置しなくてもよく、設置する場合でも任期がない。
  4. 監査役を置いた場合でも、その権限は会計監査権限のみであり、業務監査権限を与えることができない。
  5. 会計参与を設置することができない。
  6. 決算公告の義務がない。
  7. 株式の譲渡制限規定について、株主間での株式の譲渡による持ち株比率の変動を制約することができない。
  8. 合併や会社分割で存続会社や承継会社になることができず、株式交換や株式移転などの制度も利用できない。
 ○株式会社(非公開会社の場合)のメリット・デメリット
  1. 取締役の任期は、定款で定めることにより最長10年に出来るが、有限会社のように無期限にすることは出来ない。
  2. 取締役は1名以上でよく、取締役会を設置しなくてもよい。(あえて取締役会を設置することも出来る。)
  3. 取締役会を置かない場合には監査役を設置しなくてもよく、設置する場合でも、その任期を定款で定めることにより最長10年に出来る。
  4. 会社の状況に応じて、監査役の権限を会計監査権限に限定することも、会計監査権限と業務監査権限の双方を与えることも出来る。
  5. 必要に応じて、会計参与を設置することができる。
  6. 各事業年度の決算公告をしなければならない。
  7. 株式の譲渡制限規定について、株主間の株式の譲渡による持ち株比率の変動を制約することも可能である。
  8. 合併や会社分割で存続会社や承継会社になることができ、株式交換や株式移転などの制度も利用できる。
 となっています。 以下、それぞれ説明していきます。

《1:役員の任期について》

 まず、取締役の任期については、有限会社では「無期限」であったものが、株式会社では原則2年となります。非公開会社の場合は、定款で定めることによって10年に延長することができますが(6-3参照)、逆に10年に一度となると、変更登記を忘れてしまう可能性が高くなるので注意が必要です。
 ただし、すでに6-3でも説明しましたが、役員が複数いる場合で、同族以外の者や、同族であってもしばしば対立するような者がいる場合には、逆に任期が無期限だと途中で「解任」せざるを得なくなり、深刻な内紛を引き起こす可能性があります。この点、任期があれば「任期満了」のあと再選しないという形で「お引取り」願えるので、あえて任期を定めるのも、ひとつの方法です。
 もっとも、有限会社でも定款であえて任期を定めることも出来ますので、役員の任期の点では有限会社が有利といえそうです。

《2:取締役の人数・取締役会の有無について》

 取締役の人数は、ともに「最低1名」でOKですので、この点では有限会社と株式会社(非公開会社の場合)とで差はないといえます(6-2参照)。
 次に「取締役会」の設置ですが、これは有限会社では不可、株式会社では可能です。一般に、株主が取締役を兼ねているような同族会社では、別に取締役会を設置しなくても問題ありませんし、むしろ従来の商法下の株式会社では取締役会が必須の機関であったがために、形ばかりの役員の頭数だけをそろえていたことを考えると、この点でも特に有限会社が不利ということはなさそうです。
 ただし、取締役会を置かない株式会社や有限会社では、株主総会がいわば「万能機関」となりますので、株主の中に敵対的な人物がいるような場合には、あえて取締役会を置くことによって、株主総会の権限を弱めておくこともひとつの選択肢となりえます。したがって、このような場合には、必要に応じて取締役会を置くこともできる株式会社の方が、有限会社よりも会社を経営し易いといえそうです。なお、この点についての詳細は6-2で解説していますので、そちらの記事を参照してください。

《3:監査役の有無・任期について》

 有限会社では監査役の設置は任意です。株式会社(非公開会社の場合)では、取締役会を置く場合には監査役(又は会計参与)は必ず置かなければなりませんが、取締役会を置かない場合には監査役の設置は任意となっています。
 監査役を置く場合、その任期については、有限会社では「無期限」、株式会社では原則4年となりますが、非公開会社の場合は、定款で定めることによって10年に延長することができます(6-3参照)。
 なお、有限会社の場合でも、定款であえて任期を定めることも出来ます。この点は取締役の場合と同様です。

《4:監査役の権限の範囲について》

 有限会社では、監査役を置いた場合でも、その監査役の権限は「会計に関するもの(会計監査権限)」に限定され、「業務に関するもの(業務監査権限)」を与えることはできません。
 これに対して、株式会社(非公開会社の場合)では、会社の状況に応じて、監査役の権限を「会計監査権限」に限定することも、「会計監査権限」と「業務監査権限」の双方を与えることも出来ます。
 監査役が「業務監査権限」を有している場合には、取締役の業務の執行を監督するのは監査役となりますが、監査役の権限が「会計監査権限」に限定され、「業務監査権限」を有していない場合には、株主が直接取締役の業務を監督することになります。その結果、株主の権限が大変強くなります(詳細は6-2参照)。
 したがって、「口うるさい」株主や敵対的な株主がいるような場合には、株式会社を選択して監査役を設置し、「会計監査権限」と「業務監査権限」の双方を与えたほうが、経営がやりやすい(?)ことになります。

《5:会計参与について》

 会計参与とは、公認会計士や税理士が、株式会社の内部機関として、取締役と共同で計算書類(決算書)を作成して保存し、株主や債権者に計算書類の内容を説明、開示する制度です。株式会社であれば、規模の大小や取締役会の設置の有無に関係なく、すべての会社で会計参与を設置することができます。(設置は任意です。)
 しかし、会計参与は有限会社では設置することができませんので、設置する場合には株式会社に組織変更をする必要があります。
 なお、会計参与についての詳しい説明は、6-4をご覧ください。