〜理容室・美容室(美容院)経営の法律知識〜

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理容室・美容室(美容院)の開業・経営に必要な行政手続や法律知識について、さまざまな情報を提供しています。理美容室経営者の方や将来独立開業予定の理容師・美容師の方、理美容業界関係者の方は、ぜひお読みください!
6-11.有限会社を続けるか? 株式会社になるか?(2)
《6:決算公告について》

 決算公告とは、株式会社の決算書を新聞や官報などに掲載することで、それなりに費用がかかります(数万円程度?)。有限会社では決算公告は不要ですが、株式会社になると必要となります。
 なお、決算公告をインターネットのウェブサイトに掲載する方法も認められています。この場合、いわゆる合併等を行う場合の電子公告とは異なり、貸借対照表の公表のみをウェブサイトで行う場合には、特に認証機関の認証手続なども不要ですので、現在すでにウェブサイトを持っている会社にとっては、コストがそれほどかからない方法だといえます。
 ただし、官報や日刊新聞に掲載する場合には決算書の『要旨』でよいところ、ウェブサイトに掲載する場合には決算書そのものを掲載することになります。しかも、それを5年間継続して掲載し続けなければなりません。したがって、決算書の内容があまり人に見せられないような状態ですと、ウェブサイトに掲載する方法には抵抗を覚えるかもしれませんね(笑)。しかし、財務内容が健全で、情報公開を積極的に行うことで投資家からの出資を積極的に募っていこうとするような会社の場合には、とても良い方法だといえそうです。

 なお、余談ですが、旧商法でも株式会社ならば決算公告をする義務がありました。しかし、実際のところ、それをきちんと行っていた会社は少なかったともいわれていますし、また、そのことが原因で過料を科せられたという話も、あまり聞いたことがないそうです。
 ただし、会社法では、現在の中小企業の実態に合わせて、規制の内容が旧商法時代に比べて非常に緩やかになっているにもかかわらず、実際にはあまり守られていない決算公告の義務がしっかり残されている点は、警戒する必要があると思います。

《7:株式の譲渡制限について》

 従来、有限会社では、「社員以外の第三者に」持分を譲渡する場合には、社員総会の承認が必要という扱いでした。この扱いは、会社法の施行後の有限会社でも同様です。したがって有限会社では、その株式を『第三者=他人』に譲渡する行為は制限できても、『株主同士で株をやり取りした結果、持ち株比率が変わる』ような行為は制限できない、すなわち株主間での持株比率の変動はコントロールできないということになります。
 一方、株式会社では、株式を『第三者』に譲渡する場合はもちろん、株主同士での株式の譲渡についても、会社の承認手続きを要するなど、制限をすることが出来ます。したがって、複数の株主がいる会社で、分散している株式が誰か一人の株主に集中して、その株主が力を持ちすぎてしまうことを防ぎたいような場合には、株式会社の方がよいことになります。

 また、株式譲渡の承認を行う機関も、有限会社では「株主総会」に限定されますが、株式会社ではその会社の実情に応じて「代表取締役」「取締役会」「株主総会」のように自由に定めることができます。

《8:事業再編について》

 有限会社は、合併や会社分割で存続会社や承継会社になることができず、株式交換や株式移転などの制度も利用できません。
 合併で存続会社になれないということは、有限会社同士で合併をすることが(新設合併を除いて)できないことになります。一方、消滅会社として他社に吸収されることはできますので、有限会社同士で合併を行う場合には、まず存続させる会社を株式会社へ変更してから、合併手続を行うことになります。(なお、新設合併の場合、合併前の会社が有していた許認可などが取り直しとなるため、現実には利用が困難です。)

 また、株式交換とは、株式会社がその発行済み株式の全部を他の株式会社(又は合同会社)に取得させ、完全親子会社の関係を新たに作り出す制度であり、株式移転とは、一または二以上の株式会社が、その発行済み株式の全部を新たに設立する株式会社に取得させ、持株会社を新たに作り出すための制度です。いずれもM&Aの手法として活用される制度ですが、有限会社ではこの制度は利用できないことになっています。

《9:株式会社への変更手続きについて》

 有限会社から株式会社へ変更する手続についても説明しておきます。
 まず株主総会で商号に関する定款規定の変更決議をします。例えば 「第1条 当会社は、有限会社○○と称する。」という定款の規定を、「第1条 当会社は、株式会社○○と称する。」といった具合に変更します。
 この際に、○○の部分を含めて、すべて変更してしまうことも可能です。例えば、変更前の社名が「有限会社理美容六法」である場合には、「株式会社理美容六法」に変更することはもちろん、「株式会社理美容六法ジャパン」や、あるいはまったく関連のない「株式会社サロン・リーガル・マネジメント」という名称にすることも可能です。(もっとも、先にその名前を使用している別の会社がある場合には、注意が必要です。)

 その後、変更登記申請手続が必要となります。この申請には、登録免許税が6万円かかるほか、手続を司法書士などに依頼する場合には、別途報酬がかかります。6万円というのは高いと感じるかもしれませんが、この変更登記の際には商号や目的、公告方法、発行可能株式総数、株式の譲渡制限に関する規定などを、すべて一新することができます。これらの変更登記を個別に行った場合には、登録免許税は1項目につき3万円ですので、むしろ割安ともいえます。
 
《10:まとめ》

 以上、有限会社・株式会社それぞれのメリット・デメリットを比較してみました。
 全般的に、株主や取締役が1名のみであるか、複数名であっても親族などで固められている同族会社の場合には有限会社、株主や取締役が複数名で、同族以外のものが株主や取締役に就任しているような場合には株式会社の方が、実情にあった会社運営ができそうな印象をうけますね。

 しかし、ひとつ念頭においておかなければならないことは、有限会社という制度は、あくまで「特例」として、「とりあえず」存続が認められている制度であるということです。実際、有限会社について定めていた法律である「有限会社法」は廃止されましたし、現在の有限会社は、「会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」という長い名前の暫定的な法律の中で、「特例有限会社」という名前で、「当面の間」存続が認められているにすぎないのですね。

 また、平成18年5月1日以降、新規に設立ができなくなったということは、「有限会社」という名前が、やがてはよく言えば「歴史と伝統ある」、悪く言えば「過去の遺物」的なイメージを持たれることは、創造に難くありません。これが、呉服屋さんや和菓子屋さんのようなお店ならいいと思うのですが、ファッション的な要素の強い産業である理美容業界では、どうかなと個人的には思います。

 さらに、金融機関や取引先の目も、気にする必要があると思います。有限会社と株式会社の違いのうち、日常的にもっとも影響が大きいのは、おそらく役員の任期と、決算公告の有無だと思います。しかし、もしも役員変更の登記や決算公告の費用を節約することだけの理由で、有限会社を選択するとしたら、外部の人からすると、「それだけの費用を節約するためだけに、保守的な選択をしているのか」と思われてしまわないでしょうか?

 また、近年では、「個人情報」はともかく、「企業の情報」については、積極的に開示していくことで企業の透明性を確保し、社会の信頼を得るというのが、世の中の流れになっています。そうしたなかで、決算公告が不要だから有限会社を選択するということは、悪くすると「決算公告を見せたくないから有限会社」→「財務内容が悪いか、意図的に隠す理由があるから有限会社」などと、あらぬ疑いをかけられないともいいきれません(もっとも、株式会社を選択しながら、決算公告をしないよりはましですが)。

 このように考えていくと、やはり今後会社を発展・成長させていこうという経営者の方は、やはり株式会社を選択すべきであると、個人的には考えます。ただし、有限会社はいつでも株式会社に変更できますが、一度株式会社になると、もはや有限会社に戻ることは出来なくなりますので、この点は慎重に対応する必要があります。