〜理容室・美容室(美容院)経営の法律知識〜

『理美容六法.com』‐理容室・美容室経営の法律知識‐ サイト運営元
お問い合わせ
理容室・美容室(美容院)の開業・経営に必要な行政手続や法律知識について、さまざまな情報を提供しています。理美容室経営者の方や将来独立開業予定の理容師・美容師の方、理美容業界関係者の方は、ぜひお読みください!
6-13.合同会社とはどんな会社か?
 会社法の施行により、新たに「合同会社」という類型の会社の設立が認めらるようになりました。そして、この「合同会社」、実は小規模な理容室・美容室にぴったりの会社組織なのです。その理由はまた順次書いていきますが、とりあえず本節では、「合同会社」とはどのような会社なのか、その概要を説明していきます。

《1:合同会社とは?》

 会社法で新たに設立が認められるようになった「持分会社」の一種です。ただし、合名会社や合資会社とは異なり、その社員(出資者のこと)は株式会社や有限会社と同様に、すべて「有限責任社員」です。
 一方で、株式会社などと異なり、法律の規制が緩く、比較的自由に会社の内部組織や利益配分のルールなどを決めることが出来るというメリットや、設立手続きが簡単で、費用も安いというメリットがあります。この点は、従来の合名会社や合資会社と同様です。
 つまり、合同会社とは、従来の株式会社・有限会社のメリットである「有限責任」と、合名会社・合資会社のメリットである「会社運営の自由度が高く、組織もシンプルで設立費用も安い」というメリットを、両方備えている会社組織であるということが出来ます。
 なお、このような会社形態は、欧米ではすでに導入されていました。アメリカではLLC(Limited Liability Company)と呼ばれ、その数はすでに100万社にも達し、おもに金融・保険・不動産・リース業やサービス業などで活用されています。そこで、「合同会社」のことを、「日本版LLC」と呼ぶこともあります。

《2:有限責任社員とは?》

 「有限責任社員」とは、出資先の会社が倒産したような場合に、自分の出資した割合でのみ責任を負い、それ以上の責任は負わない社員(出資者のこと)のことをいいます。合同会社の社員のほか、株式会社の株主なども有限責任社員の一種です。
 一方、「有限責任社員」の反対が「無限責任社員」です。「無限責任社員」は、出資先の会社が倒産したような場合には、出資した範囲に関係なく、全責任を負います。合名会社の社員などがこれに当たります。

 例えば、Aさんという人が、ある会社に400万円を出資していたとします。その後Aさんが出資していた会社が倒産した場合に、もしもAさんが「有限責任社員」であるときには、Aさんは出資した400万円は諦めることになりますが、それ以上の責任は負わなくてもいいということになります。
 一方、もしもAさんが「無限責任社員」であるような場合には、その会社が倒産して、会社に残った財産だけでは銀行や取引先などの債権者たちに債務を返済しきれないような場合には、Aさんは出資した400万円を諦めることはもちろん、自宅など、自分個人の財産を売り払ってでも、債務を返済しなければならなくなります。

 このように、「有限責任社員」は、「無限責任社員」に比べて、その責任の範囲が限定されています。したがって、もしも友人などが経営する会社の「無限責任社員」になってくれと頼まれた場合には、よほどその友人が信用できる人間でない限り、あとでとんでもないことにもなりかねませんが、「有限責任社員」になってくれと頼まれた場合には、出資したお金がパアになる可能性はあるものの、それ以上の責任は負うことはないので、比較的引き受けやすいということになります。(もっとも、この場合でも、保証人になっていた場合や、共同経営者として参加していた場合には、別の責任を負う可能性はあります。)
 逆に言えば、「有限責任」の方が、「無限責任」よりも、はるかに出資者を募りやすいということになります。

3:合同会社は「人的資産」を活用できる会社形態

 もともと、株式会社は大企業を想定して作られた会社組織でした。また、「所有と経営の分離」と言って、会社のオーナーである株主は経営には直接タッチせず、専門知識をもった経営者が、会社の経営を行うというシステムを前提に考えられた企業形態でした。
 要するに、株式会社では「お金を出す人」と、「実際に経営する人」が別の人間であることが前提なのですね。そこで、経営陣が会社を「食い物」にして、株主らの利益を省みずに私服を肥やしてしまうような事態を防ぐために、商法などの法律でいろいろな規制を設けていたわけです。株式会社では、やれ取締役の任期が2年とか、株主総会の議決権はこうだとか、決算公告をしろだとか、とかく法律による規制が多い理由はここにあるのですね。
 ところが、実際には株式会社の90%以上は、「所有と経営」が一致する、いわゆる「オーナー会社」なのですね。したがって、「自分の会社のことなのに、何でこんなにも多くのことを、法律で規制されなければならないのか」と思っていた方も多かったのではないでしょうか?

 また、株式会社では、結局のところ、「知恵や汗を出した者よりも、お金を出したものが一番偉い」という面があることも、否定できません。最近の企業買収合戦などを見ていますと、特にそう思います。株式を買い占めた人間が、実際に会社を切り盛りするために働いている人たちよりも、「一番強い」のですね。

 一方、従来からあった合名会社などでは、社員(出資者)が会社の経営に関して最終責任を負うため、うっかり他人に経営を任せてしまったら、あとでどうなるか分かりません。ここでは「所有と経営」は一致しているのですね。したがって「自分の会社だから、自分でルールを決める」ことも、割と自由に認められていたのです。
 また、株式会社とは異なり、「労務やノウハウ」を出資して社員となることも出来ましたし、定款の定め方によっては、そうした「お金は出さないけれど、知恵や汗を出す」人間にある程度会社の経営権を持たせたり、利益配当を出したりすることも出来ます。会社の業績に貢献した人間に、それ相応の地位や利益配当を与えやすい組織なのです。しかし、「無限責任」などがネックとなって、あまり普及しなかったのですね。

 この点、合同会社では「有限責任」でありながら、株式会社と比べれば「自分の会社のルールは、自分で決める」という「定款自治の原則」が広く認められています。また、例えば「お金は少ししか出資しないが、知恵やノウハウを提供する」という人間に、より多くの地位や利益配当を与え、彼らのモチベーションを引き出すことも出来るわけです。
 21世紀は「人の時代」と言われています。すぐれた工場設備や立派な店舗などといった「有形資産」よりも、特許やすぐれたビジネスモデルといった「無形資産」が、企業をより発展・成長させる時代になってきています。そして、こうした「無形資産」は、人間の能力や知恵、ノウハウから生み出されるものです。こうした時代に、その人間の能力や業績・貢献度に応じて、経営についての発言権や利益配当を与えることが、合同会社では可能なのですね。

 ただ、できれば新しい時代の新しい会社に、もっとふさわしい名前にしてほしかったのですが・・・「合同会社」では、「合名会社・合資会社」のイメージからか、なんか最初から古臭いネーミングだなと思うのは私だけでしょうか? まあ、それはともかく、次節以降で、合同会社についてさらに詳しくみて行きます。