〜理容室・美容室(美容院)経営の法律知識〜

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6-15.合同会社のデメリットは?
 前節6-14では合同会社のメリットについて見てきましたが、今回は合同会社のデメリットについて見て行きます。

《1:利益の分配を巡って対立が生じやすい》

 これは、前節6-14で書いた「利益の配分を、出資額とは関係なく自由に定めることができる」というメリットの裏返しですが、合同会社では、利益の配分を自由に定める事が出来るがゆえに、かえってその事が社員(共同経営者)同士の対立を招きやすいというデメリットとなって現れることも考えられます。最大のメリットが、最大のデメリットにもなりうるのですね。
 もっとも、この点については「一人合同会社」では問題となりませんが。

《2:意思決定について対立が生じると、収拾が難しい》

 この点も、合同会社のメリットである「会社の内部組織を、定款で自由に定めることができる」というメリットの裏返しです。会社内部の意思決定のルールを「柔軟に」設定できるがゆえに、かえってそのことが「あいまいさ」となり、社員(共同経営者)同士の信頼関係が良好なうちは良いのですが、ひとたび対立が生じた場合には、収拾がつかなくなるおそれがあるのですね。
 ただし、この点については、「一人合同会社」では問題となりませんし、また定款で業務執行社員を置く旨を定めるなどして、ある程度意思決定方法を明確化することでカバーすることは出来ます。いずれにせよ、ここでも「定款」の定め方が、重要なポイントになりそうですね。

 上記の利益の分配についてもそうなのですが、合同会社は「人的会社」と呼ばれるように、「良くも悪くも」それぞれの構成員の個性や相互の信頼関係が、経営にダイレクトに反映されるのですね。したがって、月並みな結論なのですが、合同会社を成功させるか否かは、まず第一に「信頼できるパートナー選び」、そして第二に「信頼関係の維持」ということになりそうです。

《3:社会的な認知度が低い》

 少なくとも、現在の日本では、まだまだ「株式会社」の認知度、信頼度は高く、一方合名会社・合資会社は社会的な認知度や信頼度が低いという傾向があることは否定できません。「合同会社」も、欧米ではLLCとして広く認知されているとはいえ、日本においてはまだ実績が少ないですし、認知度、信頼度にも多少の疑問符がつきます。
 しかし、2006年12月、全日空と一流ホテルのインターコンチネンタルグループが、共同で合同会社を設立し、全日空ホテルズの運営を行うというニュースも入ってきました。このように、世界に冠たる大企業同士でも合同会社制度が利用されたことから、合同会社の社会的な認知度や信頼度も、今後はアップしていくものと思われます。

 一方、すでに株式会社についての記事でも説明したように、会社法の施行により、今後は単に「株式会社」というだけでは信用されない時代がやってくる事が予測されます。会社法時代の会社は、その形態よりも中身が重視されるようになるのですね。そのように考えると、合同会社を選択するというのも、あながち奇抜なことではないと思います。

《4:オーナーの権利譲渡・事業承継が難しい》

 合同会社の社員(共同経営者)の地位の一部または全部を他人に譲渡する場合には、原則として他の社員『全員の同意』が必要となります。合同会社では「人的な信頼関係」が重視されるため、社員が誰であるかは他の社員にとって重大な問題なのですね。これは要するに、「Aさんがいてこそ、私はこの合同会社の経営に参画していたんだ」という他の社員の意向を尊重するためのルールです。
 したがって、もしAさんがその社員(共同経営者)の地位を、例えば息子のBさんに譲りたいと考えたとしても、他の社員のうち一人でも「あんなバカ息子のBが経営に参画することは認めたくない」と反対されればそれまでなのです。

 この点、株式会社では原則としてオーナーの地位(=株主)を譲渡することは自由ですし、また、たとえ多くの中小企業に見られるように、株式の「譲渡制限」があったとしても、株主総会なり取締役会なりで一定の決議をすれば、(少数の反対株主がいたとしても)株式を譲渡することが出来ます。

 ただし、合同会社から株式会社への組織変更は認められていますので、事業の立ち上げの時期には合同会社で経営を行い、事業承継の時期になったら株式会社に組織変更をするという方法で、この欠点をカバーする方法もあります。

《5:労務や信用の出資が出来ず、また出資全部の払込が必要となる》

 これは、「合名会社・合資会社」と比較した場合のデメリットです。合名会社や合資会社の無限責任社員では、「労務」や「信用」の出資も認められており、また、合資会社の有限責任社員の場合は、設立時に必ずしもその全額を払い込む事が必要とされていないのに対して、合同会社では「労務」や「信用」の出資は認められておらず、また設立時までに出資金の全額を払い込む必要があります。
 もっとも、たとえ1円でも出資すれば、社員となれるわけですし、また、利益の分配割合などは出資の額とは無関係に定める事ができるので、このデメリットはそれほど問題にならないとも言えそうです。

《6:計算書類(決算書類)を、債権者が閲覧可能にする必要がある》

 これも、「合名会社・合資会社」と比較した場合のデメリットです。合名会社・合資会社の場合にも、計算書類の作成義務や、社員に対して開示する必要はありますが、債権者に開示する必要はないのですね。
 これに対して合同会社では、計算書類を社員はもちろん債権者(銀行や取引先など)に対しても開示する必要があります。

《7:法人課税であること》

 この点については、後述する「有限責任事業組合(LLP)」と比較した場合のデメリットです。したがって、株式会社・有限会社や合名会社・合資会社と比較した場合には、合同会社はこれらの会社と課税上大きく異なるわけではないため、デメリットとはいえません。
 なお、日本の合同会社のモデルとなった欧米のLLCでは「パス・スルー課税」というものが認められており、これが税金対策上非常にメリットが大きいことから、LLCの普及に大いに貢献していたのですが、残念ながらこの制度は「日本版LLC」と呼ばれていた合同会社では認められませんでした。
 なお、「パス・スルー課税」については、6-18の有限責任事業組合(LLP)の項目で詳しく説明させていただきます。