〜理容室・美容室(美容院)経営の法律知識〜

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理容室・美容室(美容院)の開業・経営に必要な行政手続や法律知識について、さまざまな情報を提供しています。理美容室経営者の方や将来独立開業予定の理容師・美容師の方、理美容業界関係者の方は、ぜひお読みください!
6-16.理美容室経営における合同会社の活用法(1)
 会社法の施行により、新たに設立が認められた「合同会社」は、理容室・美容室の経営にどのように活用できるのでしょうか?
 合同会社のもつ性質から、次のような活用方法があるものと思われます。

《1:「一人会社」を合同会社で設立》

 合同会社は株式会社と比較して、設立費用が安く、また、組織がシンプルに出来るため、運営コストも安く済みます。また、旧商法での合名会社や合資会社と異なり、社員1名でも設立できます(※会社法では、合名会社についても、社員1名での設立・存続が認められるようになりました。)
 さらに、個人事業や合名会社とは異なり、社員の責任は「有限責任」です。もっとも、この点については、社員が自ら会社の業務執行を行うような場合には、金融機関等は社員の個人保証を求めることが多いので、結局は「無限責任」に近い形となってしまうケースもあります。しかし、その場合でも、個人事業や合名会社の「無限責任」と比較すれば、責任を負うのは個人保証をした金融機関等に限られてきますので、ある程度は「リスクを読む」ことが出来ます。
 もっとも、いくら「有限責任」だからといって、好き勝手な放漫経営をしていますと、「会社の経営者としての責任」を負わされることにはなりますが。

 また、合同会社は「法人格」を有しますので、店舗などを法人名義で保有できることはもちろんですが、税制上も当然に法人扱いとなります。したがって、ある程度事業規模が大きくなってきた場合には、個人事業よりも税率が低くなることや、経費として認められる支出の範囲も広くなることから、節税効果が高くなります。

 つまり、合同会社は、個人事業と比較して、有限責任であることや税金面で有利であるというメリットがあり、一方で株式会社と比べて、より個人事業に近いようなシンプルな組織で、柔軟かつローコストでの経営が出来るというメリットの、二つを併せ持っているということがいえます。

 ところで、現在の中小企業の多くが「株式会社」形態をとっているのは、やはり「株式会社」の方がいろいろな意味で信用力が高いという実情があるからでしょう。しかし、すでに他の節で見てきたように、会社法の施行により、今後は一口に「株式会社」といっても、資本金1円、取締役1名の会社から東証一部上場の大企業まで、玉石混交の状態になります。
 これはすなわち、「株式会社ブランドの大衆化(?)」を意味します。要するに、これからは単に「株式会社」というだけでは、ブランドにも信用力にもならないという時代に入っていくわけですね。そうなると、会社の形態よりも、その中身がより重視される時代になってきます。したがって、「合同会社」という耳慣れない会社名よりも、「株式会社」の方が信用力がありそうだというイメージは、あと何年かは続くかもしれませんが、だんだんと無くなっていくのではないでしょうか。実際に、6-15でも書きましたが、全日空とインターコンチネンタルホテルが共同出資して設立した会社が、株式会社ではなく合同会社を選んでいるくらいですから。

 また、一般に理容室・美容室の経営は、「会社名」よりも「屋号(店舗名)」が前面に出ます。お客様にしてみれば、自分の通う理容室・美容室が「株式会社」であるか、「合同会社」であるか、「個人事業」であるかということは、あまり気になっていないはずなのですね。したがって、この面では別に「株式会社」にこだわる理由はないと思われます。

 一方、金融機関に対しての信用力ですが、すでに別の節で述べたように、会社法の施行により、金融機関も会社の形態よりもむしろその中身を重視するようになると思われます。少なくとも、単に「株式会社」というだけでは、信用力を持たなくなります。また、一般に理容室・美容室は「現金商売」と言われていますが、このことは、金融機関などにおいても、かなり有利に評価されている傾向があります。したがって、この点でも、株式会社と比べ、合同会社が極端に不利になることはないと思います。

 ただし、採用面では、「株式会社」と比べて「合同会社」では多少イメージ的に不利になるかもしれません。しかし、この点については、給与、社会保険、技術サポート、お店の雰囲気、オーナーの人柄などで、カバーすることも出来るのではないでしょうか。

《2:少人数で、共同で合同会社を設立》

 合同会社のメリットのひとつに、当事者の合意さえあれば、出資の額とは無関係に、利益の分配を定めることが出来るという点があります。例えば敏腕のスタイリストAさんと、会社の経営実務に詳しいBさんと、お金をもっているCさんが協力して会社を立ち上げる場合に、たとえ出資額がAさん100万円、Bさん200万円、Cさん700万円という割合だとしても、ABC三人の合意があれば、利益の分配をAさんが50%、Bさんが30%、Cさんが20%というように定めることも自由に出来るのですね。
 このように、「実際に働く人間」に利益を多く配分することで、彼らのモチベーションを引き出すことが出来るというわけです。合同会社が「人的資産を有効に活用するための会社形態」と呼ばれるのは、まさにこの点にあります。
 さらに、会社の運営に関る重要事項の決定方法についても、当事者の合意さえあれば、かなり自由に定めることが出来ます。

 一方、株式会社では、上記のような場合、通常は「お金をたくさん出したCさんが一番強い」ということになります。原則として利益の分配や、株主総会の議決権は、Cさんが一番有利になります。たしかに「給与」としてAさんやBさんに報いることは出来るかも知れませんが、そうすると結局AさんやBさんはCさんに「雇われている」ということになってしまい、「共同経営」の場合と比べて、モチベーションも引き出しにくいのですね。

 もっとも、「共同経営」というのは、一般に利益の配分や会社の経営方針などを巡って対立しやすい面もあります。したがって、設立時によく当事者で話し合っておく必要はあるでしょう。