〜理容室・美容室(美容院)経営の法律知識〜

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6-18.有限責任事業組合(LLP)とは?
 合同会社(LLC=Limited Liability Company)と似たような組織として、有限責任事業組合(LLP=Limited Liability Partnership)というものがあります。LLPは法人格を持たない「組合」ですが、合同会社との共通点も多いため、この節で少し説明させていただきます。

《1:有限責任事業組合(LLP)とは?》

 2005年8月に施行された、「有限責任事業組合契約に関する法律」に基づいて設立される組合組織です。共同で営利事業などを行うことを目的とし、2人以上の組合員によって設立が可能です。
 合同会社と同じく、組合の構成員全員が、その出資した金額についてのみ責任を負う「有限責任組合員」です。また、利益の分配割合などを契約で自由に定めることが出来るという点も、合同会社と同様です。そのため、「取締役会」や「株主総会」ならぬ「組合総会」のようなものを設置する必要もなく、シンプルな組織によるスピーディでローコストの運営が出来ます。また、設立手続きも比較的簡単です。
 ただし、合同会社とは異なり、有限責任事業組合には「法人格」はありません。

《2:有限責任事業組合(LLP)のメリット》

 構成員全員が「有限責任」であること、および組合内部の運営が、契約で比較的自由に定めることができること、損益の分配割合を、出資額とは無関係に定めることができることは、合同会社と共通のメリットです。それでは、合同会社と比べて、有限責任事業組合のメリットとは何でしょうか? それは、「構成員課税(パス・スルー課税)」が認められているということに尽きると思います。
 「構成員課税(パス・スルー課税)」とは、組合の事業によって獲得した利益に対する課税が、その組合自体に対して行われるのではなく、出資者個人に対して行われる課税方式のことです。一般に、「パス・スルー課税」には節税の効果があると言われています。

 例えば、ある株式会社で1000万円の利益が出たとします。仮に税率が30%としますと、ここから300万円の税金がまず差し引かれて、残りは700万円となり、これが利益配当の原資となります。そして、株主Aさんがそのうちの10%を受け取るとするならば、Aさんの配当は70万円となります。しかし、Aさんはまるまる70万円の儲けとなるかというと、そういうわけではなく、Aさんが受け取った配当金70万円には、Aさん個人に対する所得税が課せられます。この税率が仮に10%としますと、結局Aさんが得られるのは実質63万円となります。
 つまり、株式会社の場合には、まず会社の利益に対して税金が引かれ、残った配当金を株主個人が受け取ったあとで、さらに個人に対する所得税として税金が引かれるわけですね。これを「二重課税」といいます。

 一方、「構成員課税(パス・スルー課税)」が認められている有限責任事業組合(LLP)の場合、例えば1000万円の利益が出た場合でも、LLPの利益そのものには課税されないため、税金はゼロです。そして、組合員のAさんがそのうちの10%を受け取るとするならば、Aさんの「配当」は100万円となります。この100万円には、Aさん個人に対する所得税が課せられますが、この税率が仮に10%としますと、Aさんが得られるのは実質90万円となり、株式会社と比べて27万円も多く得られることになります。
 以上の計算は、あくまでひとつの例です。実際には剰余金の分配規制や所得税の累進課税などで、複雑な計算となってきますが、いずれにせよ「構成員課税(パス・スルー課税)」の方が税法上有利であることは、ご理解いただけると思います。

 さらに見逃せないのが、事業において損失が発生した場合の処理方法です。株式会社において損失が発生した場合、利益がないわけですから、税金はゼロ(所得割)になります。しかし、その株式会社に出資している株主の所得税には、特に影響はありません。
 これに対して有限責任事業組合(LLP)では、事業によって生じた損失を、出資者の他の所得と通算し、出資者個人の所得税を減らすことが出来るのです。したがって、例えばある有限責任事業組合(LLP)が1000万円の赤字を出してしまったとしても、その組合員であるAさんの損失の負担割合がもし10%だとすれば、Aさんは確かに配当を得ることは出来ませんが、Aさん個人の所得が他に500万円あるとするならば、この500万円の「黒字」と100万円の「赤字」を相殺して、Aさんは「所得400万円」として税金を申告することが出来るのですね。仮に税率が10%とするならば、Aさんは50万円の所得税を支払うべきところ、40万円で済むことになります。

 このように、有限責任事業組合(LLP)に認められている「構成員課税(パス・スルー課税)」は、事業が黒字の場合でも赤字の場合でも、構成員の税金負担を軽くするというメリットがあります。したがって、当初は研究開発費などで赤字になることが予想される事業やリスクの高い事業を、有限責任事業組合(LLP)を設立してそこで行わせることにより、たとえ赤字になっても「有限責任」のため、本業への悪影響を最小限に食い止められるほか、「構成員課税(パス・スルー課税)」によって、本業の方の税金負担を軽くすることが出来るわけです。
 こうした特長を活かして、有限責任事業組合(LLP)は、企業間のジョイントベンチャーなどに利用されることが予想されています。

《3:有限責任事業組合(LLP)のデメリット》

 最大のデメリットは、「法人格」を有しない点です。そのため、例えば組合の名義で不動産を所有したり、登記をすることは出来ません。また、株式会社などの法人に「組織変更」することも認められていません。
 この点、合同会社にはもちろん「法人格」がありますし、株式会社に「組織変更」することも認められていることと、大きな違いがあります。
 また、合同会社とは異なり、出資だけの組合員は認められておりません。組合員は何らかの形で、組合の業務に関る必要があります。
 結局のところ、合同会社(LLC)と有限責任事業組合(LLP)のどちらの組織形態を選択するのかは、「法人格」をとるか、「構成員課税(パス・スルー課税)」をとるか、という選択になりそうですね。