〜理容室・美容室(美容院)経営の法律知識〜

『理美容六法.com』‐理容室・美容室経営の法律知識‐ サイト運営元
お問い合わせ
理容室・美容室(美容院)の開業・経営に必要な行政手続や法律知識について、さまざまな情報を提供しています。理美容室経営者の方や将来独立開業予定の理容師・美容師の方、理美容業界関係者の方は、ぜひお読みください!
6-2.株式会社の役員について(1)
 新しい会社法では、株式会社の「機関設計」や役員の任期について、多くの変更がなされました。「機関設計」というのは会社を運営する役割分担のようなもので、株主総会、取締役・代表取締役、監査役などをどのように設定するかをいいます。会社法ではこの「機関設計」や任期の設定の自由度が増し、各会社の置かれた状況に応じたルールを設定することが可能になりました。

《1:取締役1名、監査役なしでもOK(非公開会社の場合)》

 旧商法では、株式会社は、まず1名以上の株主からなる株主総会と3名以上の取締役からなる取締役会を設置し、この取締役の中から代表取締役を1名以上選出し、さらに、それとは別に監査役を会社の規模に応じて1名〜3名以上揃えなければなりませんでした。取締役と監査役は兼任できないため、最低4名〜6名の頭数が必要だったわけです。
 そこで、実質的には代表取締役が1人で会社を経営しているにも関わらず、残りの取締役や監査役の人数を揃えるために、妻や息子の名前を借りたり、親戚や取引先などに頭を下げてお願いしたりしていたケースも、その良し悪しは別にして、現実には多かったかと思われます。

 しかし、新しい会社法では、定款(ていかん)に「株式全部の譲渡制限」という規定を定め、これを登記することによって、株主総会と取締役1名だけ、監査役なしという、あたかも従来の有限会社のようなシンプルな組織で、株式会社を経営できるようになりました。

 「定款(ていかん)」というのは会社の根本規則で、どの会社でも会社設立時に必ず定められているもので、国で言うと憲法に相当するものです。また、「株式の譲渡制限」というのは、例えば「当会社の株式を譲渡により取得するには、株主総会の承認を要する」といったように、定款に定められたルールのことです。いわゆる「同族会社」ではほとんどの会社で定められているルールで、株式が同族以外の他人の手に渡って会社経営に口出しをされることを防ぐ目的があります。

 なお、株主総会と取締役1名だけという組織に変更出来るのは、株式の『全部』について上記のような「譲渡制限」を定めている株式会社(これを「非公開会社」といいます)のみです。したがって、「株式の譲渡制限を全く定めていない株式会社」と「株式の一部についてのみ譲渡制限を定めている株式会社」(これを「公開会社」といいます)では、この規定はあてはまりません。これらの「公開会社」では従来通り、取締役3名で取締役会を設置し、監査役(会)を設置する必要があります。

 また、「非公開会社」であっても、あえて従来のまま取締役会を置き、取締役3名、監査役1名をそろえておくことも出来ます。これについては後述します。

 なお、「公開会社」か「非公開会社」かの区別は、株式を上場・店頭公開しているかどうかとは別問題です。上場や店頭公開をしていない会社でも「公開会社」になる場合がありますので、判断が難しい場合には、当事務所または最寄の司法書士等に、一度ご自身の会社の定款を確認してもらうことをお勧めします。

《2:取締役会は廃止すべきか?(非公開会社の場合)》

 現在すでに株式会社を経営している方は、新しい会社法が施行された後も、特に上記のように「機関設計」を変更しなければ、一定の例外的なケース(※)を除き、そのまま特別な手続きをしなくても、今までどおりに会社を経営できます。

 ※一定の例外的なケース
   小会社(資本金1億円以下かつ負債総額200億円未満の株式会社)で
   「公開会社」の場合
   →会社法が施行された後6ヶ月以内に監査役の変更登記をする必要が
     あります。(登記を怠った場合、100万円以下の過料に処せられます)

 したがって、ご自身の会社を今後どのように経営するのか、今までどおりにいくのか、この機会にすっきりシンプルな組織に変更するのかについて、ある程度の方針を立てておくことが必要になるかと思います。

 例えば、前述のとおり、定款に「株式全部の譲渡制限」という規定を盛り込むことによって、取締役は1名でもよくなります。無理に3名の頭数を揃えて、形ばかりの取締役会を設置したり、監査役を設置する必要は、確かになくなります。

 しかし、取締役会を設置しない会社では、株主総会の権限が非常に強くなります。株主総会の権限は、取締役会を設置する会社では「会社法に規定する事項及び定款で定めた事項に限り、決議をすることができる」のに対し、取締役会を設置しない会社では「会社法に規定する事項及び株式会社の組織、運営、管理その他株式会社に関する一切の事項について決議をすることができる」となっており、いわゆる「万能機関」となります。

 また、中小企業であれば、取締役個人が会社にお金を貸し付けたり、逆に会社からお金を借りたりといったことを行う場面もあるでしょう。この場合は、法律上「利益相反行為」といって、取締役会が設置されている会社では「取締役会」の承認が必要となりますが、取締役会が設置されていない会社では、「株主総会」の承認が必要となります。

 このように、取締役会を設置するかしないかによって、会社の重要事項の決定機関が「取締役会」であるか「株主総会」であるかの違いが出てきます。株主が1名の完全オーナー会社や、株主と取締役の顔ぶれが一致する会社であれば、それでも問題はないかもしれませんが、例えば経営陣に敵対的な態度をとるような株主がいる場合には、取締役会を置かないと、かえって経営がやりづらくなる可能性もあるわけですね。

《3:監査役は廃止すべきか?(非公開会社の場合)》

 また、取締役会を設置する会社では、監査役(又は会計参与)は必ず置かなければなりませんが、取締役会を設置しない会社では、監査役の設置は任意となっています。したがって、従来名目だけで監査役を置いていたような株式会社では、取締役会を廃止したことに伴い、監査役も同時に廃止することが多いと思われます。

 しかし、監査役を置いていない株式会社では、株主が直接、取締役を監督することになります。例えば、監査役を置いていない株式会社では、株主は必要とあれば会社の営業時間中はいつでも、取締役会議事録の閲覧を請求したり、コピーの交付を請求することができます。これに対して監査役を置いている株式会社では、株主は裁判所の許可を得なければ、取締役会議事録の閲覧やコピーの交付を請求できないとされています。

 このように、監査役を設置するかしないかによって、取締役の業務を監督する機関が「株主」」であるか「監査役」であるかの違いが出てきます。そうすると、例えば「口うるさい」株主がいる場合には、監査役を置かないと、かえって経営がやりづらくなる可能性もあるわけですね。

 なお、ここで注意しなければならないのは、たとえ監査役を置いている株式会社でも、その監査役の権限が「会計に関するもの(会計監査権限)」に限定されている場合には、やはり株主が直接取締役の業務を監督することになる点です。
 監査役の権限は「業務に関するもの(業務監査権限)」と「会計に関するもの(会計監査権限)」の2種類があります。そして、「非公開会社」では、定款で監査役の権限を「会計監査権限」に限定することが出来ます(監査役『会』設置会社を除く)。なお、定款に監査役の権限を「会計監査権限」に限定する定めがない会社でも、会社法の施行前から存在する小会社(資本金1億円以下かつ負債総額200億円未満の株式会社)については、監査役の権限は「会計監査権限」に限定されているものとみなされます。

 したがって、株主に直接業務を監督されたくない(?)場合には、定款を変更して、監査役に「業務監査権限」と「会計監査権限」の両方を与える必要があります。なお、このあたりの判断は結構難しいので、お悩みの場合には当事務所または最寄の司法書士等に、個別に相談することをお勧めします。