〜理容室・美容室(美容院)経営の法律知識〜

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6-5.類似商号規制の緩和と株式会社設立手続の簡素化とついて
《1:類似商号規制の緩和について》

 旧商法では、同一の市町村において同一の営業を行うために、同一の商号または類似の商号を登記することはできないとされていました。
 例えば金沢市内において、すでに「サロン・デ・ロッポウ」という商号で美容室を経営している会社が存在する場合には、同じ金沢市内で美容室を経営するための会社として、全く同じ名称である「サロン・デ・ロッポウ」を設立することはもちろん、これと似たような名称である「サロン・ド・ロッポウ」や「サロン・de・ロッポウ」も、できないことになっていました。
 しかし会社法では、この「類似商号規制」が大幅に緩和されました。

○会社法での類似商号の扱い

 会社法では、上記のような類似商号の規制が、『同一市町村』から『同一の住所』に変わりました。つまり、同じ金沢市内で、すでに「サロン・デ・ロッポウ」という商号で美容室を経営している会社が存在する場合であっても、同じ金沢市内で美容室を経営するための会社として、全く同じ名称である「サロン・デ・ロッポウ」や、これと似たような名称である「サロン・ド・ロッポウ」や「サロン・de・ロッポウ」を使用して、一応設立すること自体はできるようになりました。
 ただし、さすがに『同じ住所』で『同じ商号』を使用することは、さすがに認められていません。同じ住所で同じ社名となると、両者の区別がまったくつかなくなるためです。

○類似商号規制の廃止の理由

 それでは、なぜ会社法では、この「類似商号規制」が大幅に緩和されたのでしょうか?
 ひとつ目の理由は、従来の「類似商号規制」が、会社設立の手続きに時間と手間がかかる大きな理由となっていたからです。つまり、上記の例で、新たに「サロン・デ・ロッポウ」という会社を設立して、美容室を経営しようと考えた場合には、まずこの「サロン・デ・ロッポウ」という商号と同じ、または似たような社名を使用して美容室を経営している会社が、同じ金沢市内にすでに存在するかどうかを調査しなければならないことになります。この場合、『同じ』かどうかは見ればすぐに分かりますが、『類似』かどうかの判断は微妙です。例えば、同じ金沢市内で美容室を経営する会社として、すでに「ヘアサロン・ろっぽう」という名称のものがある場合はどうか、あるいは「Salon de Roppou」ではどうか、「六法美容院」ではどうか・・・キリがないのですね。
 特に、いわゆる「ローマ字商号」が認められるようになってから、さらにその判断は困難となりました。「ABC美容室」と「ACB美容室」と「エイビー美容室」は、果たして「類似商号」となるのか・・・難しいところです。
 
 もうひとつの理由は、インターネットの普及などにより、たとえ中小企業でも日本全国は言うに及ばず、全世界を相手に事業活動が出来るようになった時代に、はたしてその範囲を『市町村』に限定して、「類似商号」の規制をすることに意味があるのか、ということなのです。さりとて、その範囲を『全日本』あるいは『全世界』に広げることも不可能ですので、いっそのこと廃止にしてしまえということになったわけです。

○不正競争目的の商号使用規制について

 類似商号規制の緩和は、これから会社を設立しようとする人間にとっては有利といえますが、すでに会社を設立している人間にとっては、場合によってはとても不利な状況も生じえます。
 例えばすでに金沢市内で「サロン・デ・ロッポウ」という商号を利用して美容室を経営している会社が、親切で丁寧な接客や確かな技術力によって一定の「ブランドイメージ」を築きあげているとします。そんなときに、その店のすぐ近くで、「サロン・ド・ロッポウ」という名前のお店が現れ、同じ系列のお店だと誤解したお客様を奪っていったり、乱雑な技術や接客でお店のブランドイメージを傷つけたりしたら、たまったものではありません。
 そこで、このような不正な競争目的で、同一または類似の商号を使用するものが現れた場合には、その使用の差止めや、損害賠償の請求をすることが出来るとされています。

 逆に言えば、あらたに会社を設立しようとする側も、すでに設立された同業者から訴えられないためには、同じ商号はもちろん、似たような商号を用いることも、避けたほうが無難だといえそうです。

 なお、登記の有無に関らず、大企業のように広く知られた商号を使用することは、「不正競争防止法」で規制されています。

《2:株式会社の設立手続の簡素化について》

 株式会社の設立手続のうち、「発起設立」(発起人自らが設立時に発行する株式の全部を引き受ける設立方法)については、出資金の払込手続が、旧商法時代と比べて大幅に簡素化されました。
 旧商法の時代には、出資金の払い込みは、払込取扱金融機関を決定し、その金融機関に払込事務を委託して出資金を払い込み、「出資払込金保管証明書」というものを発行してもらう必要がありました。しかし、「出資払込金保管証明書」の発行には、発行する側の金融機関もそれなりに責任を負うことから、発行手数料が高額であったり、申込後発行までの時間が長くかかったり、また、個人事業主の時代から取引のある人間の依頼以外は断られるケースもあったようです。
 また、会社の設立手続が完了し、登記事項証明書の交付を受けて、それを金融機関に提出するまでは、その出資金は凍結され、開業に必要な機材の購入などに使えないという問題点もありました。

 会社法では、「発起設立」の場合には、出資金の払い込みは発起人個人の普通預金口座に振込みをして、その通帳のコピーに設立時代表取締役が作成した証明書を添付して法務局に提出すればよいことになりました。また、出資金も登記の完了を待たずに利用することが出来るようになりました。
 もっとも、資本金を他から借りてきて出資金の払い込みを行い、通帳のコピーを撮った後でするに返済するような行為は「見せ金」といって会社法や刑法の詐欺罪などで処罰の対象となるので、この点は注意が必要です。、

 なお、「募集設立」(発起人以外の者に、設立時に発行する株式の一部を引き受けてもらう設立方法)については、旧商法と同じく、「出資払込金保管証明書」の交付を受けることが必要です。