メールマガジン 週刊「理容室・美容室の経営法務」 バックナンバー
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  週刊「理容室・美容室の経営法務」 第8号 2005年12月7日発行
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     <発行元:行政書士 森法務事務所 毎週水曜日発行>
  URL:http://www.ribiyou6pou.com/ MAIL:magazine@ribiyou6pou.com
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  ○今週の記事
   ・今週の話題:店舗設計のアトリエワールド、民事再生手続へ
   ・民事再生手続って、破産手続とどう違うの?
   ・理容室・美容室とお客様との契約関係(3)
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★☆今週の話題☆★

 みなさま、こんにちは!行政書士の森です。
今週もよろしくお願いいたします。

 理容室・美容室の店舗設計・施工で知られる、大阪府の株式会社「アトリエ
ワールド」が、先月30日、大阪地裁に民事再生手続の開始を申請し、同日保
全命令を受けました。負債額は約85億円です。

 株式会社アトリエワールドは、約10年前に、当時としては画期的な「保証
人保証金無しの店舗リースシステム」を開発し、その独自ノウハウを活かして
業績を伸ばし、実績は1200店舗、ピーク時の売上高は約48億円に達して
いました。

 しかし、最近では理容室・美容室の新規開業数が減少したことや、すでに理
美容室を構えている経営者が新たに支店を増やす際、独自に金融機関から借り
入れをするというケースが増えたため、業績が徐々に悪化し、昨年から営業赤
字に転落していました。

 このため、人件費の削減などのリストラ策を進めていましたが、融資をして
いた株式会社三洋倶楽部などが、三洋グループの経営再建問題に絡み、これ以
上の支援継続は難しいと判断したことから、自主再建を断念した模様です。

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★☆民事再生手続って、破産手続とどう違うの?☆★

 さて、上記の「アトリエワールド」についての記事で、「民事再生手続」と
いう言葉が出てくるので、ここで少し説明します。

 企業が「債務超過」つまり、持っている現金や土地などの資産よりも買掛金
や借金などの負債が多くなってしまった場合に、その企業は「倒産」すること
になります。そして、倒産手続には「清算型の手続」と、「再建型の手続」が
あります。

 大雑把に言って、「清算型の手続」とは「破産手続」のことで、もはやその
企業に立ち直る見込みがなく、会社をたたんで、その会社に残った現金、商品
、債権、社屋、土地などの財産を「公平」に債権者に分け与える手続きとなり
ます。

 「公平」という言葉は誤解を招きそうなのですが、これは「債権者同士」の
公平を図るという意味です。破産法が制定される以前には、企業や個人が破産
状態に陥ったような場合に、その企業や個人にお金を貸していて、まだ返済を
受けていない人や、商品を売ってまだその代金を受け取っていないような人た
ち(債権者)が、先を争って残された債務者の財産の差し押さえにかかってい
ました。
 その結果、「早い者勝ち」で財産を差し押さえた人や、「力づく」で財産を
差し押さえた人だけがお金を回収することができ、それ以外の債権者は一銭も
返してもらえないという不公平な状態になっていたのです。
 また、破産状態となった債務者が、知り合いの債権者などを「えこひいき」
して、残ったわずかな財産を優先的に返してしまうという不公平も、問題とさ
れていました。そこで、こういった不公平をなくし、裁判所や破産管財人の管
理の下で、「公平」に、残った財産を債権者に分け与えるといった目的で、破
産法が制定されたといういきさつがあります。

 また、破産法には、多数の債権者が殺到し、行き過ぎた取立てを行うことか
ら債務者を守るといった目的もあります。
 ちなみに、最近では、耐震強度偽装問題で、木村建設が東京地裁に破産を申
し立て、受理されたことが話題となっていますよね。もっとも、木村建設の例
では、自らは法を犯し、多数の被害者をつくっておきながら、自分は破産法を
隠れ蓑にして身を守るという、納得のいかない状態が生じているのも現実なの
です。この点は大いに問題ありですよね。

 次に、「再建型の手続」ですが、これには「会社更生手続」や「民事再生手
続」があります。こちらの方法では、企業は負債を免除されて生き残ることに
なります。

 「会社更生手続」は、対象が株式会社に限定され、また、主に大企業が倒産
しそうになった場合に用いられます。大企業が倒産すると、失業する従業員が
数多く、また多くの取引先などが連鎖倒産する危険性が高いことなどから、こ
うした制度が用意されています。

 一方、民事再生手続は、主に中小企業等を対象として用意された制度で、株
式会社はもちろん、有限会社などの会社でも、また個人事業者や医療法人、学
校法人、社会福祉法人や宗教法人も利用することができます。
 
 民事再生手続では、原則として、それまでの経営陣が引き続き事業を継続し
ながら、主体的に債権者に対する弁済計画やリストラの方法を定めた「再生計
画案」を作成し、債権者の多数決による承認を得て、承認された計画に従って
再建を図ることになります。
 なお、民事再生手続きは、債務者自身の他、債権者も申し立てることができ
ますが、株主が申し立てることはできません。

 このように、民事再生手続は、経営者がその地位を追われることなく、債務
の免除を受けて会社の経営再建を図ることが出来るため、現代の「徳政令」と
いわれ、このことが逆に債務者である会社の経営陣の経営モラルを低下させる
のではないかと、懸念される声も上がっています。
 しかし、たとえ負債が「帳消し」になったとしても、その後にまた赤字が続
くようでは、結局最後は「破産」となるわけですね。マイナスがゼロになって
も、プラスになるわけでは決してないのです。
 また、そもそも将来黒字化する見込みがなければ、企業の再建に不可欠な債
権者らの協力が得られません。例えば、自然災害や不動産投機の失敗の結果債
務超過に陥ったものの、本業は黒字であるような企業については、民事再生手
続きは有効な手段ですが、そもそも本業が赤字で、この先も黒字に転ずる計画
も材料もないような場合には、決して有効な手段ではないのですね。

 結局のところ、倒産しかかった会社を再建するには、経営陣の確固たる決意
とリーダーシップ、従業員の努力と債権者の理解・協力が必要となるわけです
ね。(なお、この記事はあくまで一般論として書いています。)

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★☆理容室・美容室とお客様との契約関係(3)☆★

 今回がこのテーマの最終回です。まずは、前回までの話をまとめてみます。

「髪型が注文どおりに仕上がらなかった場合」の法律関係

○お客様は理容師・美容師に対して、「直せ」と請求することができる。
 ただし「注文と違う」点が些細で、それを「直す」のには過大な費用・手間
 がかかる時には直さなくても良い。

○この場合、お客様は美容室側に対し「損害賠償」を請求することができると
 民法で規定されてはいるが、現実に「損害賠償」を請求するためには
 ・「損害の発生」
 ・「髪型が注文と違う」ことと「損害」との間の「相当因果関係」
 が必要なため、現実には「損害賠償」請求が認められる可能性は低い。

○仮に損害賠償請求が認められた場合でも、その範囲は
 ・「通常生ずべき損害」
 ・「特別な損害」のうち、美容室側が『予測していた』損害、
  又は『予測可能な』損害
 のみ責任を負い、それ以外の損害については責任を負わなくても良い。

○「注文どおりに仕上がらなかった」原因が、お客様の指示の仕方にある場合
 ・美容室は「やり直し」も「損害賠償」もしなくていいし、法的には
  お客様に代金も請求できる
 ・ただし、「お客様の注文の仕方」が不適切であることに美容師が気づ
  いていながら、そのことを指摘せずに施術した場合には、責任を負う
  場合もありうる。
 
 ところで、この「お客様の支持の仕方」については、現場で働く理容師・美
容師の方にとっては微妙なところですよね。
 まず、お客様のオーダーの内容が曖昧である場合、例えば口頭で「芸能人の
○○の髪型のようにしてくれ」と告げた場合でも、芸能人もいつも同じ髪型を
しているわけではないですし、また、お客様の髪の長さや硬さ、あるいは、そ
れこそ頭蓋骨の形状によっても、同じ髪型を創ることができない場合もありま
すよね。ヘアカラーの色にしても、髪質によって仕上がりが異なりますよね。 

 ただし、この場合には、前回までのメルマガでも触れましたが、お客様に対
して「この髪型にするのは難しい」「完全には同じ色を出すのは難しい旨を、
『やんわりと』告げておいた方が無難です。

 もちろん、プロとして「この髪型には出来ない」と言うことは、抵抗がある
かとは思います。しかし、「技術的に出来ない」ことと「状況を判断した結果
出来ない(やらない)」ことは別問題なのですね。時には「出来ない」ことを
「出来ない」とはっきり言うこと、それもまたプロなのだと思います。

 今回の裁判の場合、美容室側に不利な点は(マスコミの報道が真実だとすれ
ば)お客様が口頭だけではなく、女性雑誌に載っていた髪型を美容師に見せた
上でオーダーをしていること、それから、髪を切る際に「巻き髪やアップにで
きるよう、最も長い部分の長さは残す」とはっきりと注文していたにもかかわ
らず、それができない短さにされてしまったことでしょう。
 これでは、「お客様の注文の仕方が悪い」という弁解は通用しにくいと思わ
れます。

 さらに、髪を切る前の髪型が、そのキャバクラのウェブサイトに掲載されて
いたことから、髪を切る前のその女性の容姿がどのようであったかの立証が容
易であったことも想像できます。まあ、そうでなくとも、そのキャバクラ嬢に
「お願い、証言して」と頼まれたら、多くの男性客は喜んで引き受けたでしょ
うけれど。(笑)

 おそらく、今回の判決が出たことで、理容師・美容師の方々が一番心配され
るのは、「髪型が注文と異なる」ことを理由として実際に訴えられることより
も、この判決を「ダシ」にして、悪質なお客様が無理難題を吹っかけてくるこ
とではないでしょうか?

 しかし、このメルマガで3回にわたって連載してきたとおり、実は、「髪型
が注文と異なる」ことで「損害賠償」を請求できる確率は、「ニュースになる
くらい低い」のですね。

 それに、弁護士費用の問題もあります。とある弁護士さん(今回の裁判とは
無関係)の書いたブログに書いてあったのですが、今回の裁判にかかる弁護士
費用は、着手金だけで39万円にはなるとのことでした。
 着手金は「請求額」がベースになりますので、今回の場合は600万円を基
準に計算するのですね。そして、判決で「勝ち取った金額」に対して、さらに
「成功報酬」がかかります。また、それとは別に印紙代が3万4千円かかりま
す。なお、この計算は、昔の報酬基準で行われています。現在は弁護士の報酬
も自由化されているので、まあ、だいたいの目安といったところですね。

 そして、現在の法律では、弁護士費用は『各自』が負担します。印紙代につ
いては、一応敗訴した側が負担するとされています。
 今回、原告のキャバクラ嬢が手にした金額は、裁判前に美容室から受け取っ
た10万円とあわせても34万円です。「赤字」の可能性大ですね。
 最近はTVなどで、あたかも簡単に慰謝料を取れると誤解している方が多い
のですが、実際には24万の慰謝料をとるのに40万円以上かかるというのが
現実なのです。

 ただし、見落とせないのは、訴えられた側の美容室も、もし弁護士を雇って
いたならば、その報酬を支払わなければならないということです。この場合の
金額算定も、『着手金』については先ほどと同様です。つまり、「600万円
払え」と請求された側が「守り」のために弁護士を雇った場合にも、600万
円をベースに計算した39万円の着手金を払うことになるのですね。
 ですので、キャバクラ嬢側が「赤字」であったとしても、「美容室側」はそ
れ以上に大きな負担を負ったことには変わりませんが。

 ところで、この損害賠償は、誰が負担するのでしょうか?
 お店でしょうか? それとも施術した美容師個人でしょうか?
 答えはいくつかのパターンがあり、事例によっても異なりますが、もっとも
典型的なのは、まずお店が原告に対してお金を支払い、その後で施術した美容
師個人に対して、そのうちのいくらかを請求するというパターンです。
(これを「求償権」といいます。)
 もっとも、お店から美容師個人に請求(求償)できる金額は、原告に支払っ
た金額のうちの一部のみ、実際上はゼロということもあります。この点につい
ては、また別の機会で詳しく書いていこうと思います。

 なお、今回の記事では「髪型が注文したのと異なる場合」の「損害賠償」に
ついて、詳しく書いてきましたが、それでは、その際の「料金」についてはど
うでしょうか? 
 実は、料金を「受け取れる」のか、「受け取れない」のかは、法律上はその
「髪型が注文と違う程度」により微妙です。ただし、通常は理容室・美容室で
のサービス料金が、それ自体を裁判で争うような金額になるとは考えにくいで
すので、あまり問題とはなりません。
 法律的な問題よりも、むしろ営業的な面で、ケース・バイ・ケースの判断・
対応が求められると思います。

 ただ、最初から代金を払う意思がないのに、「髪型を気に入らないと言えば
料金を払わなくていいんだ」などと良からぬことを考えて、それを実行すると
刑法上の詐欺罪にあたりますので、念のため。

 最後にひとつお断りしておきますが、以上の結論は、あくまで私の「私見」
です。もちろん、私もそれなりに法律の文献などを調べた上で書いていますの
で、まったくのデタラメを適当に書いているわけではありません。

 ただ、法律の問題というのは、すべてケース・バイ・ケースなのですね。世
の中に、完全に全く同じ事件が存在しない以上、「同じような事件」でも違っ
た判決が出ることは、実際にも起こりえる話です。
 弁護士が4名出演する某TV番組でも、それぞれの弁護士によって慰謝料が
とれる・とれないで、意見が異なる場合がありますよね。それと同じです。
 
 もし読者のみなさまが、不幸にしてこのような事件に巻き込まれてしまった
場合には、やはりその都度弁護士の方に相談することをお勧めします。
 なお、残念ながら、行政書士には裁判に関係する仕事はできませんので、事
件が起きてしまった後は、私が相談に乗ることはできないのですね。
 それをやってしまいますと、現在とある国会議員で問題となっているように
「弁護士法違反」で、逮捕されてしまう可能性がありますので。

 ただ、私としては、裁判になる前に、なるべく円満に解決を図れるように、
読者の方々に法律知識を紹介することで、貢献していきたいと思います。

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<ご注意>
 当メルマガの記事は、法律の専門家では無い方を対象に、なるべく解り易く
読んで頂けることを基本コンセプトにしております。したがって、内容の厳密
さという点では、多少いたらない点もございます。
 実際にこの記事に書かれているようなトラブルを抱えている方につきまして
は、当事務所もしくは他の法律専門家の方に、個別に相談されることをお勧め
いたします。

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<編集後記>
 今回が第8回目の配信となりました。ところで、創刊号からこのメルマガの
記事の行数をカウントしてみたのですが、創刊号が全部で140行程度であっ
たのに、第2号〜第4号では約200行となり、第5号〜第7号では約260
行にも達していました。そして今号はついに300行・・・

 長すぎるメルマガも考えものですね。書く方も読む方も疲れてしまいます。
次回からは150〜200行程度に抑えて書きますね。この辺も、メルマガ発
行初心者ということで、まだまだ未熟ですね。お許しください。m(_ _)m

 『まぐまぐBooksアワード』のご投票を、ぜひともお願いいたします。
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 投票は、まぐまぐから当メルマガを購読されている方はもちろん、それ以外
の配信元から購読されている方や、配信登録はせずにウェブサイト上でバック
ナンバーを読まれている方でも行えます。また、「1人1日1票」までですの
で、日が変われば同じ人でもまた投票できます。まあ、ここまで頼むと図々し
いのですが・・・とりあえず今、1票をよろしくです。m(_ _)m

 それでは、次号もよろしくお願いします。

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 ○発行元:行政書士 森法務事務所 毎週水曜日発行
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 ○本誌に掲載した記事内容の無断転載・転用・転送は一切お断り致します。
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