メールマガジン 週刊「理容室・美容室の経営法務」 バックナンバー
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  週刊「理容室・美容室の経営法務」 第62号 2007年2月14日発行
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  <発行元:金沢みらい共同事務所 司法書士・行政書士 森欣史>
   毎週水曜日発行  関連サイト http://www.ribiyou6pou.com/
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★☆『キャバクラ嬢・髪型裁判』を分析する(5)☆★

 みなさま、こんにちは! 司法書士・行政書士の森です。
今週も、どうかよろしくお願いいたします。
 さて、前号では、美容室で髪を切ったり、パーマやカラーリングを施すこと
が法律上どのような「契約」になるのか、「請負」となるのか「委任」となる
のかについて、原告のキャバクラ嬢側(についている弁護士)と、被告の美容
室側(についている弁護士)で主張の食い違いがあったことを解説しました。

《原告のキャバクラ嬢側の主張》

(1)美容業の顧客との契約における基本的な合意事項は、合理的な反証が
   ない限り、美容業の監督官庁である厚生労働省の認可にかかる「美容
   業に関する標準営業約款規程集(財団法人全国生活衛生営業指導セン
   ター発行)」及び適正な取引慣行によって形成されるものと推定され
   るべきである。
(2)頭髪美容施術は、仕事の完成を目的とするので、あえていえば委任型
   ではなく、請負型である。
(3)仮に委任型であっても、受任者には善管注意義務があり、それによっ
   て、請負型における仕事の完成に等しい事務処理が要求されるので、
   委任の立論は無意味である。即ち、委任型であるからといって自由裁
   量ではない。

《被告の美容室側の主張》

(1)本件美容契約は、頭髪美容施術に関する業務委託契約であり、その法
   的性質は準委任契約である。すなわち、頭髪の状態、性質には個人差
   があり、また同一個人であっても年齢や頭髪のコンディションによっ
   ても変化する。したがって、美容師は、顧客から指定された髪型に向
   けて行う施術につき、カット等の程度・方法や一定の整容などに関し
   て相当程度広範な裁量権を有する。
(2)被告の美容室Eは標準営業約款に関する登録を行っていない。なお、
   都内5200を超える美容室のうち、その登録を行っている店舗は平
   成16年3月現在161に過ぎない。

 まず、原告のキャバクラ嬢側の主張を要約すると美容室は『標準営業約款』
に定められているサービスを提供しなければならない。また、美容室で髪を切
ったり、パーマやカラーリングを施すことは法律上は「請負契約」として取り
扱われるとなっています。
 これに対して、被告の美容室側の主張は、「当店は『標準営業約款』の登録
を行っていない」、また、美容室で髪を切ったり、パーマやカラーリングを施
すことは法律上は「準委任契約」として取り扱われるとなっています。

 それでは「請負」と「委任(準委任)」では何がどう違うのでしょうか?

 まず「請負」の場合は「ある仕事を完成させること」について、報酬が支払
われる契約となります。逆にいいますと、「仕事を完成させられなかった場合
には、原則としてそれまでやった分の報酬すら、支払われない」ことを意味し
ます。また、「仕事を完成」とは、すなわち「依頼主の注文通りに仕上げる」
ことを意味しますので、「注文通りに仕上がらない場合」には、やはり報酬を
請求することは原則として出来なくなります。

 例えばズボンのウエストや裾の長さを仕立て直してもらうというのも、請負
契約の一種ですが、ウエストが注文通りのサイズに仕上がっていなかった場合
には、依頼主はお金を払う必要はありませんし、右側の裾は直したけど、左側
の裾はまだ直していないというのであれば、右側の直し代だけ請求できるとい
うことにはもちろんならないということなのです。

 また、建物の新築やリフォームも、請負契約の一種ですが、この場合も基本
的には「依頼主の注文どおりに完成させて、はじめて報酬の請求が出来る」の
が原則なのですね。
 
 なお、請負契約の詳細は、このメルマガのバックナンバー第6号で解説して
いますので、そちらをご覧ください。

 一方、「委任契約」とは、他人のために法律行為を行う契約をいいます。こ
れは、例えば弁護士が依頼人の代わりに裁判などの訴訟行為を行ったり、私の
ような司法書士が、会社の設立手続を依頼人の代わりに行ったりするような契
約です。また、会計記帳業務などの事務を代行するような場合にも、委任契約
に近い「準委任契約」となります。

 そして、「委任」ないし「準委任」の場合には、途中何らかの事情で仕事が
中断した場合にも「やった分だけ」の報酬は請求できることになっています。
(もちろん、個別の合意により、成功報酬制にすることもできますが)

 一見不公平ですが、「委任」はその意味では「雇用」と同じ考え方なのです
ね。つまり「雇用」の場合には、「働いた時間分」の報酬は当然に請求できま
す。「雇用」と「委任」は「仕事の完成」を目的とするのではなく、「他人の
ために働く」こと自体に対して報酬が支払われるという契約なので、働いた分
の報酬は仕事が途中でも請求できることになるのですね。
 なお、「雇用」と「委任」の違いは、「雇用」は雇用主から仕事のやり方に
ついて指揮監督を受けるのに対し、「委任」は仕事を受けた人間の裁量で仕事
をすすめることが出来る点に、その違いがあります。

 では、美容室で髪を切ったり、パーマやカラーリングを施すことは「請負」
なのでしょうか? それとも「委任(準委任)」なのでしょうか? 実は、こ
れは結構難しい問題なのです。(次号に続く)

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<ご注意>
 当メルマガの記事は、法律の専門家では無い方を対象に、なるべく解り易く
読んで頂けることを基本コンセプトにしております。したがって、内容の厳密
さという点では、多少いたらない点もございます。
 実際にこの記事に書かれているようなトラブルを抱えている方につきまして
は、当事務所もしくは他の法律専門家の方に、個別に相談されることをお勧め
いたします。

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<編集後記>
 残念なニュースです。医師資格がないのに、まぶたの一部にアートメイクを
した容疑で、警視庁町田署は、東京都町田市のエステ店「クーミン」の女性経
営者(50)を2月7日までに書類送検しました。

 アートメイクに関しては、当サイト『理美容六法.com』の下記のページ
http://www.ribiyou6pou.com/kiji/4-5.html
http://www.ribiyou6pou.com/kiji/4-6.html
でも解説していますが、施術するには医師免許が必要であり、これに違反する
と逮捕され、場合によっては懲役1年などの実刑判決を受けることもあるぐら
い、重い罪に問われます。

 ちなみに、私はこのニュースを当初は知らなかったのですが、当サイト『理
美容六法.com』のアクセス解析で「アートメイク 逮捕」というキーワードで
の訪問が以上に多くなったことから、このことを察してはいました。

 実は、私も『理美容六法.com』を通じて、この件で被害を受けた消費者の方
や、逆に逮捕された経営者の方(!)から、相談を受けたこともあります。

 「まわりがやっているから大丈夫」というのは、飲酒運転同様、まったく理
由にならないのです。「ごめんですむなら警察はいらない」わけですね。

 それでは、次回もよろしくお願いいたします。

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