メールマガジン 週刊「理容室・美容室の経営法務」 バックナンバー
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  週刊「理容室・美容室の経営法務」 第63号 2007年3月7日発行
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  <発行元:金沢みらい共同事務所 司法書士・行政書士 森欣史>
   毎週水曜日発行  関連サイト http://www.ribiyou6pou.com/
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★☆『キャバクラ嬢・髪型裁判』を分析する(6)☆★

 みなさま、こんにちは! 司法書士・行政書士の森です。
最近は業務多忙につき、メルマガの配信をすっかりサボってしまいました…
m(_ _)m が、今週も、どうかよろしくお願いいたします。

 さて、前号では、美容室で髪を切ったり、パーマやカラーリングを施すこと
が「請負」となるのか「委任」となるのかについて解説しました。
 お客様の立場で考えれば、髪形が注文したとおりに仕上がらなかった以上、
代金の支払いを拒否できるような気はします。これは、オーダーメイドの衣服
が注文したものとは異なり、着用することが出来ないような場合に代金の支払
を拒絶できるのと、同じような発想ですね。つまり、美容契約は「請負契約」
であると考えます。

 しかし、美容師の立場で考えると、髪形に関するオーダーというのは、そも
そも抽象的であり、「芸能人の○○と同じような髪型にしてくれ」などといわ
れても、芸能人もいつも同じ髪型ではありませんし、また、頭の形、髪の毛の
長さや太さ、性質、痛み具合などによっても、同じような髪型をつくれない場
合も、当然出てきます。
 また、仮にヘアスタイルの雑誌などを持ち込まれて、目に見える形ではっき
りとオーダーをされたとしても、やはり同じことですよね。それに、仮にその
雑誌のような髪型を完璧に再現したとしても、それでお客様が納得し、満足す
るとは限らないわけです。お客様とモデルさんとは、顔かたちや体系が違うわ
けですから(別に、モデルさんの方が美人だとか、そういうことをいっている
わけではありません)、同じ髪型を再現しても、それがそのお客様に似合うか
どうかはわからないということですよね。

 ただ、この点は、仮に「請負契約」と考えても、注文者の注文の仕方に問題
がある場合には美容師は責任を負わないケースもあります。もっとも、このよ
うな場合には、お客様のオーダーが「不適切」であることを指摘してあげる必
要があるということは、すでにこのメルマガのバックナンバー第6号で解説し
ています。

 ただ、前号の「原告のキャバクラ嬢側の主張」の(3)にもあるように、仮
に美容契約を「委任契約」として考えたとしても、お客様の髪型を、美容師が
お客様の意向を無視して、美容師個人の趣味志向で形作ることは当然できない
わけですし、また、「この髪型をつくるのに○時間かかったから、それだけの
料金を払え」と主張しても、本当にそれだけの労力のかかる髪形なのか、単に
その美容師の作業が遅いからそれだけの時間がかかったのかはわかりません。
したがって、「委任型」であっても、請負型における仕事の完成に等しい事務
処理が要求されることにはなるでしょう。

 さて、この点で東京地方裁判所はどのような判断をしているかというと、実
はこの判決では美容契約が「請負」か「(準)委任」かについては触れていま
せん。ただ、以下のような判断を下しています。

《本件美容契約上の債務不履行ないし不法行為の成否》

 本件美容契約の性質については当事者間に争いがあるが、本件美容契約上の
被告の債務として、原告の求めたデザイン、カラーに基づき、カットし、カラ
ーリングすること、その過程で、デザインに見合ったカット手法を採用するこ
と、デザイン、カラー等に疑義が生じれば原告に確認することであることがあ
ることについては、実質上当事者に争いがない。また、加えて、刃物や染髪料
等を用いる美容契約の性質上、併せて、原告の生命、身体を害しない安全配慮
義務があると解される。

 しかし、ここで、デザインについての原告の求めはある程度抽象的であるこ
と、頭髪の状態、性質には個人差があり、また同一個人であっても年齢や頭髪
のコンディションによっても変化するため、同じカットを施しても、結果が同
じとなるとは限らないことを勘案すると、その抽象的に求められたデザインの
髪型とするために合理的なカット手法を採用すれば、被告において、本件美容
契約上の義務違反や違法行為は問題とならないと解すべきである。

 この文章を読んでみて、美容師の読者のみなさまは、どのような感想をお持
ちになったでしょうか? 「同一個人であっても年齢や頭髪のコンディション
によっても変化するため、同じカットを施しても、結果が同じとなるとは限ら
ない」というあたりは、うなずけるものがあるのではないでしょうか?

 結局のところ、美容契約が「請負」であれ「(準)委任」であれ、お客様か
ら抽象的にオーダーされた髪型をつくりだすために、通常プロとして合理的な
カット手法を採用したのであれば、その美容師は、結果的にお客様のオーダー
した髪型を完全には再現できなかったとしても、それが直ちに「契約違反」と
なるわけではない、といっているわけなのですね。
(次号に続く)

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<ご注意>
 当メルマガの記事は、法律の専門家では無い方を対象に、なるべく解り易く
読んで頂けることを基本コンセプトにしております。したがって、内容の厳密
さという点では、多少いたらない点もございます。
 実際にこの記事に書かれているようなトラブルを抱えている方につきまして
は、当事務所もしくは他の法律専門家の方に、個別に相談されることをお勧め
いたします。

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<編集後記>
 ここのところ、本業の司法書士・行政書士業務が、かなり多忙となってきま
した。現在は不動産登記や商業登記、債務整理などの仕事を、常に十数件同時
にかかえている状態です。
 ただ、夜遅くまで仕事をしていても、事務所でひとりになることはありませ
ん。この時期は確定申告の時期でもあるので、共同事務所のパートナーの税理
士さんや、その補助者の方も、遅くまで仕事をしているからです。
 このメルマガも、なんとか続けては行きたいとは思っていますが、「週刊」
は無理があるかもしれませんね。かといって「月刊」では、間が空きすぎてし
まいますが。。。

 それでは、次回もよろしくお願いいたします。

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