メールマガジン 週刊「理容室・美容室の経営法務」 バックナンバー
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  隔週刊「理容室・美容室の経営法務」 第65号 2007年4月25日発行
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  <発行元:金沢みらい共同事務所 司法書士・行政書士 森欣史>
   隔週水曜日発行  関連サイト http://www.ribiyou6pou.com/
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★☆『キャバクラ嬢・髪型裁判』を分析する(8)☆★

 みなさま、こんにちは! 司法書士・行政書士の森です。
どうも、お久しぶりです・・・m(_ _)m 今後は「月刊」にしたほうがいいか
もしれませんが。。。とりあえず今週も、どうかよろしくお願いいたします。

 さて、前号では、原告のキャバクラ嬢が、被告の美容室の担当者(店長)に
オーダーした内容について、それぞれの当事者の言い分を見ていきました。
 すでにオーダーの段階で、それぞれの言い分が微妙に異なっていることは、
なんとなく伝わってきたと思います。しかし、単に「オーダーしたとおりに髪
型がならなかった」というだけでは、「契約違反(これを法律用語では債務不
履行といいます)」や「不法行為(故意や過失によって、他人の身体や財産、
精神的損害を与えること)」を理由として、相手方に対して損害賠償を請求す
ることは難しいことは、すでに説明しました。

 もっとシンプルにいいますと、要するに「よほどひどい施術内容だった結果
として、精神的、営業的に損害をこうむった」ことを主張・立証しない限り、
原告のキャバクラ嬢が、被告の美容室に対して損害賠償を請求することはでき
ないことになります。
 そこで、今回は原告のキャバクラ嬢が、被告の美容室側に対して、損害賠償
を請求する根拠について、その言い分を見ていきます。

《原告のキャバクラ嬢側の主張》

1.義務違反ないし違法行為の有無

(ア) 具体的施術の経過
 本件カラーリングは午後4時30分までかかり、本件カットが終了したのが
閉店間際の午後9時近くであった。本件カラーリングについては、4回やり直
しとなり、シャンプーも6回された。
 午後5時近くに、本件カットが開始されたが、本件カット開始直後から、原
告に確認もなく、担当美容師(店長)のFによりいきなり「バッサバサ」と髪
の毛が切られていった。
 Fのカットは原告に確認しながらのものではなかった。カットの途中、40
cmくもの切られた髪の毛を見た原告は、後ろの毛も相当減らされたことがわ
かり、左半分のカットを中断させた。

(イ) 本件カットについて
 Fは、本件美容契約に基づき、適正なカットをし、その間、原告にカットの
状態を確認すべき注意義務があった。
 しかし,本件カットにおいて、Fは、原告にカットの状態の確認はしなかっ
た。
 また、本件カットにおいて、髪を軽くするため、スキばさみが用いられる、
アプローチカットがされる、セニングばさみが用いられるなどによる一般的な
カットの手法が取り入れられておらず、パネルとパネルが繋がっておらず、髪
の一部が他の部分と比べて短くなっており穴や陥没があった。
 更に、本件カット後の原告の頭髪は、頭頂部が5〜10cm度であって、側頭
部に極端な短髪があり、巻き髪やアップの髪型ができないものであった。
 また、本件カット後の原告の顎下の髪の毛の先端部分10〜20cm毛髪量は
手でつかんで束ねても,細い一握り程度しかなくなった。

(ウ) 本件カラーリングについて
 Fら被告の美容師は、本件美容契約に基づき、本件カラーリングの際に頭皮
ケアをすべき注意義務があった。
 そうであるのに、予定されていた自然な赤オレンジとならなかったため、カ
ラーリングを4回に亘って行い、その度に色が三転四転し、カラー剤を洗浄せ
ず、これを頭髪に残したまま終了することとなった。Fらはカラーリングを4
回しているが、最終カラーリングの後、カットに移行する際、原告の頭髪、頭
皮にカラー剤が付着したままであり、一部は白い粉として消しゴムのカス状と
して付着していた。かかる場合、被告美容師らはカラー剤を洗い流すべきであ
ったのに、タオルで拭き取るだけで、数時間原告の頭髪頭皮につけたカラー剤
を残存させた。

(エ) なお、本件カラーリング、本件カットには、正午頃から午後9時前まで
要した。

 一般に、相手方の契約違反(債務不履行)を理由として損害賠償を求める場
合には、まず相手方との契約内容をはっきりさせた上で、その契約内容を相手
が守らなかったからこそ、損害賠償を請求できるということになります。
 これは要するに、「約束もしていないことを破ったからといって、損害賠償
を請求するいわれはない」ということなのですね。
 ところが、美容契約に限らず、現実の社会生活では、契約内容をこと細かに
「契約書」のような書面できっちりと決めておくことは、むしろまれなことな
のです。理容・美容契約の場合には、極端な話「いつものようにして」の一言
でオーダー(契約)がすんでしまうことだって、よくある話です。
 そこで、このような場合には、「常識」で判断することになります。例えば
女性が「今日は短めにお願いね」とオーダーしたからといって、いきなり丸坊
主にしてしまうことは、常識的に考えても「契約違反」となるわけです。もち
ろんアバウトなオーダーをしたお客さんに責任がないとはいえないのですが、
このような場合にはオーダーされた美容師はプロとしてお金をもらって仕事を
しているわけですから、お客様に対しきちんとその意図を汲み取り、確認をと
ることが求められるわけですね。

 また、「不法行為(故意や過失によって、他人の身体や財産、精神的損害を
与えること)」を理由として、相手方に損害賠償を求める場合には、相手方に
「故意又は過失」があったことが必要です。
 要するに、「わざと」でも「うっかり」でもなく、細心の注意をはらってき
ちんと仕事をこなしたにもかかわらず、例えば天災地変やお客様の側の特異体
質などが原因で「損害」が結果的に発生してしまったとしても、そのようにし
て発生した損害に対してまで、賠償しなければならないわけではないというこ
となのです。
 そこで、美容契約の場合ですが、まあ「わざと」お客様の髪型をめちゃくち
ゃにするなどということは、個人的に恨みがあったのならともかく(それでも
許されることではありませんが)、まあ普通はありえないでしょう。
 したがって、「過失=うっかり」であったかどうかが問題となるわけです。
そして、法律上、過失があったというのは、「ここは注意してやらなければな
らないのに(注意義務があるのに)、必要な注意をはらうことを怠った」こと
を意味します。
 例えば「狭い路地を車で走るときは徐行運転をし、前方に注意して走る義務
があるのに、それを怠った」結果、交通事故を起こした場合などが典型的な例
ですね。
 上記の「原告の主張」では、この点についても指摘しているわけなのです。
(次号に続く)

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<ご注意>
 当メルマガの記事は、法律の専門家では無い方を対象に、なるべく解り易く
読んで頂けることを基本コンセプトにしております。したがって、内容の厳密
さという点では、多少いたらない点もございます。
 実際にこの記事に書かれているようなトラブルを抱えている方につきまして
は、当事務所もしくは他の法律専門家の方に、個別に相談されることをお勧め
いたします。

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<編集後記>
 いよいよ、「週刊」での発行が難しくなっています。そこで、これからは、
せめて「隔週」で発行をしていこうと思っています。
 ただ、困ったことに、「まぐまぐ」などの配信元に登録してある、このメル
マガのタイトル「週刊 理容室・美容室の経営法務」は、あとから変更がきか
ないのですね。そこで、タイトルはこのままにして、実態としては「隔週間」
ということでお願いします。
 もっとも、そういいながら、前回の発行から4週間もたっていますが・・・
まあ、気長にお付き合いいただければ幸いです。

 それでは、次回もよろしくお願いいたします。

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