メールマガジン 週刊「理容室・美容室の経営法務」 バックナンバー
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  隔週刊「理容室・美容室の経営法務」 第69号 2007年7月4日発行
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  <発行元:金沢みらい共同事務所 司法書士・行政書士 森欣史>
   隔週水曜日発行  関連サイト http://www.ribiyou6pou.com/
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★☆『キャバクラ嬢・髪型裁判』を分析する(12)☆★

 みなさま、こんにちは! 司法書士・行政書士の森です。
前回はまたまたサボってしまいましたが、今週もよろしくお願いいたします。

 さて、前号では、原告のキャバクラ嬢側が請求した損害賠償額629万90
08円の根拠について、みていきました。
 これに対して、被告となった美容室側が、どのように反論したのかについて
みていきます。

《被告の美容室側の主張》

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 1.傷害及び後遺障害について
 
 (ア) 原告の主張する後遺障害以外の損害は,結果の発生及び行為との因
    果関係をいずれも否認する。
 (イ) 原告の頭皮に円形脱毛症様のやけど状のただれが発生したとの事実
    は否認し,円形脱毛症となったことは知らない。
    円形脱毛症の原因には多様な要素が含まれており,施術と発症には
    因果関係がない。
 (ウ) 原告の主張する後遺障害は,症状固定日がなく主張自体失当である。
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 被告となった美容室側の立場としては、要するに「キャバクラ嬢の側があれ
これと、損害賠償を求めてきているが、そもそも、彼らが言うような損害は発
生していないのだから、損害賠償などを支払う義務はうちにはない。また、円
形脱毛症になったこともうちは知らないし、仮になっていたとしても、それは
うちのせいではない」ということを言っているのですね。


《裁判所の判断》

 次に、両者の言い分を聞いて、証拠や証人を取り調べた上で、裁判所はどの
ように判断したかを見ていきます。
 まずは、損害の金額以前に、原告が主張する「契約違反」「違法行為」につ
いて、「どの主張は認め」「どの主張は認めなかったか」についてです。
 原告のキャバクラ嬢が、被告となった美容室の担当美容師にオーダーした内
容については、

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 本件において,その具体的内容を検討すると,前記のとおり,

 (1)担当美容師のFは,原告のキャバクラ嬢が接客業務に携わっている
    ことを知っていたこと
 (2)原告のキャバクラ嬢が担当美容師のFに,
    ・JJ記載の本件髪型を参考にカラーリングとカットをする
    ・巻き髪やアップが可能な髪型とするため最も長い部分は残す
    ・頭頂部が短いウルフレイヤーであるHのような髪型は避ける
    と依頼したこと
 (3)・スタイルはロングレイヤー
    ・フロントの長さは鼻頭
    ・トップの長さは17〜20cm
    ・サイドの長さはセミロング(肩にかかる位)
    ・ネープの長さは肩甲骨下部〜腰
    ・シルエットは◇型
    との趣旨を伝えたと解されること
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 以上のように認定しました。そして、このオーダーに対する「結果」につい
ては、以下のように判断しました。

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 そうすると,原告が主張する点のうち,

 (1)本件カットは頭頂部が7cmいし8cmと短く,ウルフレイヤーに近く
    トップの長さ17〜20cmも一致しないことについては,本件美容
    契約上の義務違反ないし違法行為に該当する。
 (2)側頭部,後頭部の毛髪量や側頭部の短髪部分については,原告のキ
    ャバクラ嬢は,巻き髪,アップを予定していたことを担当美容師の
    Fに伝えていたことからすると,その真意は,ある程度の毛髪量の
    残存を希望していたもので,本件カットの結果は原告の希望に比べ
    毛髪量が少なかったと窺われる
 (3)他方,本件美容契約の締結の際,原告のキャバクラ嬢は担当美容師
    のFに対し,JJ記載の本件髪型を示していて,それによると側頭
    部,後頭部の毛髪量はかなり少ないものであって,原告の上記真意
    と矛盾するものであるから,事後的,客観的に見て,原告がFに対
    し,その真意を伝えていたと解することはできない。
 (4)そうすると,原告のキャバクラ嬢の真意は,本件美容契約の内容を
    構成するとは解することはできない。
 (5)なお,原告は,この点に関連して,カットの手法も問題とするが,
    本件カットが原告の希望で中断したこと,担当美容師のFが証人と
    しての発言で,空気感を出すための手法であると一応合理的な説明
    をしていることに鑑みると,現段階で,本件カットの手法が,適不
    適又は上手下手の問題を超え,違法であったとまで断定することは
    困難である。
 (6)最後に,本件カットにおいて,Fが,原告にカットを示し,その確
    認をしなかったかについては,例えば上記(1)(2)のように,
    現に違法,あるいは原告の真意に副わない結果が生じていること,
    前記認定のとおり,現に原告が本件カット中に中止を求めたこと,
    前記認定のとおり,Fは自分に任せろ等と述べていたことを総合す
    ると,少なくとも,Fが原告の希望について,充分な確認を得てい
    ないことは容易に推認できる。そうすると,被告には,この点にお
    いても本件美容契約上の注意義務違反があり,違法な行為がある。
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 まず(1)では、原告のキャバクラ嬢が「トップの長さは17〜20cm」と
オーダーしたのに対し、担当美容師が「頭頂部が7cmいし8cmと短く,ウルフ
レイヤーに近く」してしまったことについては、「契約違反」ないし「違法な
行為」であると認めています。

 次に(2)では、「原告のキャバクラ嬢は,巻き髪,アップを予定していた
こと」を認め、これに対して実際に出来上がった髪型が、「毛量不足」であっ
たことも認めています。

 しかし、(3)では、原告のキャバクラ嬢が担当美容師に見せた「JJ記載
の髪型」は、実は結構短めのカットになったいたため、原告が口でオーダーし
た上記の髪型の内容と、その写真との間にかなりのギャップがあることも認め
ています。

 そうすると、結局原告のキャバクラ嬢の真意、つまり「本当はどんな髪型に
して欲しかったのか」が、結局のところはっきりしないことになります。

 また、原告のキャバクラ嬢は「オーダーした通りに仕上がらなかった」こと
に加えて「カットの手法も適切ではなかった」と主張していたのですが、この
点について裁判所は「今回のカットが適切か不適切か、上手か下手かというこ
とまでは何ともいえないが、とりあえず『違法』というほどまではひどくない
のではないか」という判断を示しています。

 ただし、裁判所は、「結果としてはお客さんであるキャバクラ嬢の希望した
髪形には程遠い仕上がりにしてしまったこと」「実際にキャバクラ嬢がカット
の最中に中止を求めたこと」、「担当美容師が『自分に任せろ』等と述べてい
たこと」を考慮すると、少なくとも担当美容師の側に「希望する髪形の内容に
ついて、十分な確認を取ることを怠った」点については「プロとしての注意義
務を怠った」と判断しています。

 また、カラーリングについては以下のように判断しています。

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  なお,本件カラーリングが債務不履行ないし不法行為に該当するかにつ
 いては,後記のとおり,本件において,本件カラーリングに基づく損害を
 認定することはできない。
  したがって,その余の点について判断するまでもなく,原告のこの部分
 の請求は理由がない。
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 結論としては、原告であるキャバクラ嬢側が主張した、美容室側の「契約違
反」「違法行為」の大半は、裁判所によって退けられています。
 ただ、美容室側についても、「お客様のオーダーした内容について、十分な
確認を取ることを怠った」点については「注意義務違反」を認めているのです
ね。
 では、原告のキャバクラ嬢側が請求した約600万円の損害賠償については
どの範囲までが認められ、どの範囲までは認められなかったのでしょうか?
(次号に続く)

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<ご注意>
 当メルマガの記事は、法律の専門家では無い方を対象に、なるべく解り易く
読んで頂けることを基本コンセプトにしております。したがって、内容の厳密
さという点では、多少いたらない点もございます。
 実際にこの記事に書かれているようなトラブルを抱えている方につきまして
は、当事務所もしくは他の法律専門家の方に、個別に相談されることをお勧め
いたします。

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<編集後記>
 先々週の中ごろから先週初め頃にかけて、38度以上の熱が数日間続いてい
ました。この間も、頑張って予備校のガイダンスやその他の事務処理を、解熱
剤を飲みながら頑張っていたのですが、2日ほどはダウンしていました。

 どうも、過労と夏風邪による発熱だったようですね。みなさまも、体調管理
にはお気をつけください。 

 それでは、次回もよろしくお願いいたします。

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